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「サービス業としての船宿」について考えてみる

投稿日:2017年3月5日

 

これまで東京湾、相模湾、千葉外房・南房総と、主に関東圏を中心に乗合船での船釣りを楽しんできましたが、「釣り船」というサービスは沖合の釣り場と港を往復するシンプルなサービスでありながら、実にいろいろな船宿がありますよね。

乗合船の場合、船に乗るだけで半日なら5,000円くらいから、1日なら8,000円から15,000円くらいの費用がかかります。(遠征とかいえば30,000円くらいは余裕?)
その上、船宿までの交通費としてガソリン代やら高速代やらが、あるいは電車賃やらがそれぞれプラスアルファで数百円~数千円程度、釣れても釣れなくても必要となります。

トータルすると、1回7,000円くらいから20,000円くらいの娯楽になる船釣りは、ほとんどの人にとって『道楽』的な位置付けになるかと思いますが、それなりのお金を出す以上、ハズレは引きたくないですよねー。
選ぶ船宿によって釣れる・釣れないだけでなく、サービスや相性が異なるので1日の充実度が大きく変わってきますから。

そこで今回は、「釣り人が楽しく過ごすことができ、かつ船宿が繁盛していくにはどうすればよいか?」といった視点で、「サービス業としての船宿」について考えてみたいと思います。

 

1.マーケティング

いきなり「マーケティング」です(笑

というのも、何といっても『船宿は客商売』
まずはお客さんに良いイメージを持って認知してもらわなければ利用されることはなく、利用されなければ船宿としての商売は成り立たないですよね。そこで必要となってくるのがこの認知獲得・リピーター獲得のための「マーケティング」、そして利用者の満足度につながる顧客目線の「マーケティング志向」です。

  • サービスや料金、船の設備や船長の人柄など、「船宿の特徴」を多くの方に知ってもらい、実際に利用してもらう。
  • 運よく(?)利用してもらったら、また次回以降も繰り返し利用してもらえるようにサービスやクーポン(割引)を提供する。

営利企業にとってはある意味当たり前な営みですが、釣り人の人口が減っていくであろうこの先、船宿も「サービス業」であり、一方で顧客にとっては個人の趣味・道楽の領域であるといった前提の下、船宿商売も今まで以上に顧客目線で商売していかないと事業を継続していけないんじゃないの?って思うんです。

※少子高齢化によるレジャー人口そのものの減少の影響からか、釣り人口も1990年代比でほぼ半減、900万人規模に激減しているらしい(?)中、そもそもが顧客にとってはあくまでも道楽=必需品・必須サービスではない以上、真っ先に削られる出費のひとつですよね。それに釣り船は超地域密着型のサービスなので、海外展開などの広がりは期待し難いことから、国内の限られた市場の中でパイの奪い合い、あるいは如何にして国内の新たな道楽仲間を増やしていくか、の路線を取らざるを得ないんじゃないかと。。

船宿を利用する場合、顧客側の目的は意外と明確で「船で〇〇を釣ること」だったりするので、「○○釣るなら★★港の◇◇丸で」といったように、その特徴をより多くの潜在的な顧客に知ってもらうこと(=如何にわかりやすく伝えるか?その結果、如何に顧客に好意を持ってもらうか?ちょっとチープな言い方をすれば「如何にブランディングできるか?」)が、来客数を増やすためには重要になってくるんじゃないでしょうか?

ネットでの情報のやり取りが当たり前になった今、重要な情報発信手段であるホームページをはじめとしたブログやFacebookなどのネットメディアは、「船宿への入り口・玄関」のひとつと捉えることができます。

そして、それらのネットメディア上の情報を常に整理し、最新の状態にしておくことは、店先や船などをきれいにしておくことと同じように、欠かすことができない重要なポイントです。

何より、その海域、その港、その船宿への新たなお客さんにとっては、何を用意していけばいいか?は最も知りたい情報なんですね。
竿やリールのタックルセット、仕掛けやルアーの種類や重さ、そのほかに必要なグッズは何か?などなど、です。
(=「そんなのテメーで考えて来い!」はナシの方向で(笑
たとえば、竿やリールはシマノやダイワでいえばどのクラスが必要で、何種類持っていけばいい?ラインはPE?ナイロン?の何号?リーダーやハリスは何号で長さはどれくらい?オモリやルアーの重さは?針はどういったタイプの何号が必要?仕掛けは何セット持っていけばいい?などなど)



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■ネットメディアへの主な掲載情報

  • 料金体系
    釣りの対象魚それぞれの料金はいくらですか?また午前・午後、1日通しなどの種類はどんなものがあるんですか?
  • 集合時間
    夏季、冬季、それぞれ何時までに船宿に行ったらいいんですか?
    ※これ、書かれていないサイトが意外と多いです。
  • タックル、仕掛け
    タックルや仕掛けはどんなものが必要ですか?また船全体でラインの太さやオモリなどの制約はありますか?
  • 船宿までのアクセス
    船宿へはどうやって行けばいいですか?掲載されている住所は最新の住所ですか?また新たな道路網が開通してないですか?
    ※市町村合併前の古い住所が掲載されていて、カーナビで一発検索できないことがあります。
  • 受付からの流れ
    どこにクルマ停めて、どこでいつ支払いしたらいいんですか?また、どのように釣り座を確保したらいいんですか?
  • 付随サービス
    エサや氷、おしぼり、軽食や前泊用の宿泊施設、釣魚のさばきサービスなど、付随サービスにはどんなものがありますか?
  • 最新の釣果情報
    最近、釣れてますか?竿頭の人は、どんな仕掛けを使っていてどんな工夫をされてますか?
    ※「釣れている船宿に行きたい」っていうのが釣り人の本音であり、他の釣り人の釣果を見ることで「今度釣り行こっかなー」なんて触発されることも。せめて2日前くらいまでの釣果情報はほしいかなと。

利用者の立場からすると、船宿に関するこれらの基本的な情報は「行くぜ、船釣り!」「船釣りはじめてなんだけど、どこにしようか?」の状況で船宿を選ぶ上で、必要最低限な情報として正確に、かつ漏れなく知りたい情報です。

また、海況・天候・風予報などの付随的な情報は、できるだけタイムリーに、かつ分かりやすく知ることができればありがたい情報です。

ところが、これらの情報が漏れなく、正確に、タイムリーに確認できる船宿サイトは、実はそれほど多くはないんですよねー。
(情報が足りてなかったり、古かったり、「よっし、この船宿に行ってみようか!」といったワクワク感が伝わってこなかったり。多くの釣り人は、いくつかの船宿サイトを見比べてみて、電話掛ける順番を決める参考情報にしてるんじゃないかと。)

 

と、いうことは・・・

 

裏を返せば、これらの情報を正確にタイムリーに発信することができれば、他の船宿との差別化が可能だということです。
情報発信が豊富で、しかも胡散臭さなく(笑)ていねいな船宿に電話する、ここなら楽しい釣りができそうだって船宿のサイトに電話しようと思う釣り人は結構いるんじゃないかと思います。(サイトをいつ見ても「今日もサイコー!絶好釣!明日も期待大!」みたいなのは、はっきり言ってありえねー笑)
ネット時代の今、船宿さんとしてもデジタル化の波に巻き込まれているんだっていう捉え方は必要なんじゃないかと。

ちなみに個人的なお気に入りの船宿では、基本的な情報が正確かつ漏れなく発信されていることに加え、ITリテラシーに長けた船長さんがスマホを駆使してほぼリアルタイムで写真付きの釣果をアップするなど、しばらく釣り行けてなくて、釣り行きたくてウズウズな心を効果的に刺激するような対応(笑)がなされています。

そしてたいていの場合、こういった船宿の船長さんの船に乗ると、船上でのサービスも顧客目線・釣り人目線で良かったりするんですよね。

たかがホームページ、されどホームページ。
「ICT」は、「Information(情報)」と「Communication(コミュニケーション)」の「Technology(技術)」という意味です。

ネットメディアをマメに更新することで、ICTの威力はより効果的に、時に爆発的に発揮される可能性があります。

我々釣り人は、あなた(船宿)のことがもっと知りたいんです!

 

■個人的なお気に入りの船宿・サイト

  • 幸丸@千葉県飯岡
    釣果速報が速い!
    午前船、午後船と出している中で、毎日お昼ころには午前船の釣果が掲載されます。実際の船宿も「チーム船宿感」に溢れてて、おしぼりサービスや昼食サービス、さばきサービスなど、顧客満足度が高いと思います。
    特に船宿単独で開催されるヒラメやマダイなどの釣り大会は、何ともアットホームで参加する価値大いにアリだと思っています。
  • 秀吉丸@神奈川県葉山(10号船ブログ)
    風予報や魚探・ソナーの画面がふんだんに盛り込まれてて、「釣り行きてー」(笑)って思わせる内容になってます。
    またブログの文章の書きっぷりから釣り人目線に立った、サービス精神旺盛な船長の人柄が伺えます。
    実際に「顧客が釣りを満喫するため、釣らせるための丁寧さ」と「ぶっきらぼうな海の男感」が同居していて、全幅の信頼が置ける船長だと思います。
  • 一俊丸@神奈川県湘南
    こちらも釣果速報が速い
    独自のキャッチーなイラスト入りでオリジナリティに溢れてます。しかも、船上での負傷事故など、本来船宿的にはオープンにしたくないであろう情報も、謝罪と個人情報への配慮とともに包み隠さず発信されており、船宿の姿勢に好感が持てます。

2.船長

船宿商売の繁閑を大きく左右し、船上のサポート役である中乗りさんとともに「釣り人の満足度」の最大のカギを握っている存在であることは間違いないでしょう。

船長

「船宿の顔」として船上でのサービスを提供し、「釣れるところ」へ連れて行ってくれる頼もしいキャプテン。
下船するまでのしばしの間、我々釣り人が運命をともにする、運命を預けることになる絶対的な存在です。

■船上でのサービス

  • 出船時のアナウンス
    港を出る際に、「今日は乗船ありがとうございます」の挨拶とともに、どれくらいの時間走ってどの辺りのポイントへ行く予定なのか?とか、仕掛けやエサの付け方、釣り方に関する簡単なアナウンスがなされると安心ですし、うれしいですよね。
  • タナ情報のアナウンス
    釣り場についていざ投入!って時、海面からのタナ取りなのか?海底からのタナ取りなのか?は船宿によって異なるので、しばしば困ることがあります。
    ※はじめての船宿なんかだと勝手がわからないので、「うちで
    は海面からのタナをアナウンスするから!」といったことの明確な説明がないと、戸惑いますよね。出船時にどちらなのかを説明してもらえると、海底までビシを落としてしまってせっかくの魚を散らしてしまう、なんてことが起こらなくて安心です。
    またごく稀にですが、投入の合図や、タナが何メートルなのかすらさえもアナウンスされない船も・・・。
  • 海の中の状況のアナウンス
    「〇〇m前後で反応出てきたよ」とか、「二枚潮だからおまつり気を付けて」とか、見えない海の中の様子を伝えてもらえると、とても心強いです。
    ※「探検丸用意してこいよっ!」ってのはナシの方向で(笑
  • 沖上がり
    タックルの片付けって、それなりに時間掛かるんですよね。
    釣り終了、沖上がりの時間がきて、片付け終える間もなく港に向けて走り出してしまうと、水しぶきを浴びながら揺れる不安定な船上で片付けすることになり、結構大変です。

    また、釣った魚をシメて血抜きする間もなく水が止まってしまうと、これまた困ったことに。

    ※釣果が上がらず、船長の好意で実釣時間が延びたがために帰りを急ぐケースも確かにありますが。。



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これらのことから、船上サービスにおいても「情報提供」と「コミュニケーション」が大きなウェイトを占めているんですよね。

それに船上のサービスが良いと思われる船宿って、釣果も比較的上々だったり。
もちろん魚の喰い気を左右する天候や潮周りなどの自然が相手なので、「常に釣果上々」というわけにはいかず、「船上のサービスの質」と「釣果」との間には何の因果関係もないとは思いますが、個人的には船上のサービスが良いところは総じて「釣り人にしっかり釣らせてくれる」という印象を持っています。

※魚の群れを捉えて形成される大船団内でのポジショニングとかは、サービス云々ではなく、船長の性格的な部分に大きく依存してると思いますが。。
(強気に船団に突っ込んでいくか?それとも、ひかえめに船団の端の方に船をつけるか?)

  • 船長の腕(釣らせる技術、サカナのいる場所を捉える野性的なカン?)とともに船長の人柄やサービスが良いから、相対的に「ウマい人」が集まってきて釣果が上がるのか?
  • そして好釣果が得られるから、サカナとの接触機会が増えて釣り人の腕も上達し、「ウマい人」がさらに増えていくのか?
  • 結果的に釣り人よろこぶ(ニンマリ、船宿もうかる(ニンマリ

こじつけ半分なところは多分にありますが、繁盛している船宿さんでは、船長を起点としてこんな流れ・循環ができているんじゃないかと想像してみたり。

 

3.おかみさんとチーム船宿

船宿における沖でのキーマンが船長さんならば、陸でのキーマンは「おかみさん」といっても過言ではないでしょう。

そしてそのおかみさんを周りでサポートする船宿のスタッフの方々
たいていの船宿の場合、家族経営であることから船長やおかみさんのご両親、あるいは兄弟姉妹の方々が「チーム船宿」として一丸となって、様々な面で船宿運営をサポートしています。

クルマの誘導や受付、レンタルタックルやライフジャケットの貸し出し、下船後の軽食や飲み物、おしぼりサービスの準備、釣った魚のさばきサービスといった、本当に様々な対応をこなしておられます。
顧客との付かず離れずの適度な距離感を保ちながら「下船後のオアシス」を作り出しているのは、まさに「おかみさんとチーム船宿」のみなさんの努力の賜物だと思います。

たとえ釣果が芳しくなくても、大荒れの天候・海況となっても船宿に戻ればホッとする場所がある。
おかみさんとチーム船宿のみなさんに感謝!です。

※「常連さんたちのセカイ」が出来上がっていると、新たな顧客、はじめての船宿を利用する者にとってはなかなか入り込みにくいセカイが繰り広げられるわけですが、この辺りは「適度な距離感」が難しいところですね。。




おわりに

こうして船宿をみてみると、船そのものや魚探、ソナー、エンジン性能などの技術の進歩で船の設備は高度化する一方、根本的なところでは船長やおかみさんをはじめとした「チーム船宿」の方々が生み出す「ひとのぬくもり」が船宿の経営を支えているってことを実感します。

また「ひとのぬくもり」に加えて、リアルとネットの双方での「情報提供」と「コミュニケーション」をいかに効率的にしていくか、ということも、これからの時代には必須になってくるでしょう。

※もうひとつ加えると、「自然とのコミュニケーション」という点では、釣り人のマナー向上も必須ですね。脱プラとか。。

船宿経営は、休日の過ごし方・レジャーの多様化や人口減少によって、他の中小企業同様に「むかしながらの世代からの事業承継・世代交代待ったなし。それができなければ廃業も考えるか?」な状況を迎えているところが、実は結構な数であるんじゃないかとも思います。

「オレは昔からこのやり方でやってきたんだ!わからないことは自分で考えろ!文句あっかっ!」的な、職人肌で無愛想な対応(笑)も確かにアリだとは思いますが、「釣り船って、こんな程度なのかもなー」で終わらない時代になってきてるのも事実でしょう。

「人々を楽しませる娯楽を提供すること」を意識した、「エンターテインメントとしての船宿」がもうちょっと増えてきてもいいんじゃない?と思う今日この頃。

以上、釣り人側の身勝手な願望満載でお送りしました。

明日もたのしい釣りを!



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■筆者プロフィール
1970年代生まれの団塊ジュニア世代
妻、長男とともに都内在住。
子供のころのフナにはじまり、ブラックバス、ライギョなどの淡水の釣りを経て、海釣りへ。
たのしく釣りを」を第一に、フィッシングライフを満喫中。